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2003.10.9 一般用医薬品の販売規制緩和問題に対する 日本薬剤師会の意見(要旨)

平成15年10月8日

 厚生労働省では、平成15年6月27日付閣議決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、『医薬品の一般小売店における販売については、利用者の利便と安全の確保について平成15年中に十分な検討を行い、安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてについて、薬局・薬店に限らず販売できるようにする。』とされたことを受け、平成15年9月26日、省内に「一般用医薬品のうち安全上特に問題がないものを選定するための検討会」を設置し、具体的な検討を開始いたしました。

 本日、同検討会の第2回会合が開催され、本会及び全国医薬品小売商業組合連合会、全日本薬種商協会、日本チェーンストア協会、日本フランチャイズチェーン協会、全国薬害被害団体連絡協議会、スティーブンス・ジョンソン症候群患者会の7団体に対しヒアリングが実施されました。

 本会からは、
  (1)医薬品の安全対策強化が政府の基本方針であること、
  (2)我々は過去の薬害事件を忘れてはならないこと、
  (3)一般用医薬品といえども副作用はあること、
  (4)医薬品を不適切に提供することが、適切な使用の機会を失わせること、
  (5)アメリカでも一般用医薬品の副作用が顕在化していること、
  (6)医薬品販売の規制緩和は経済活性にならないこと、
  (7)法治国家である以上、現行の法律・制度は遵守されるべきであること、
  (8)薬剤師会として、説明・相談体制の充実や夜間対応の整備に努めていること、
  (9)都道府県議会等多くの地方議会においても、安易な規制緩和に反対する旨の
    意見書が採択されていること、


 等について意見を申し述べ、時代の流れに逆行するような、安全性を無視した規制緩和がなされることのないよう、慎重な検討方を要望いたしました。

 一般用医薬品の販売規制緩和問題に対する本会の基本的考え方は以下の通りです。国民の皆様のご理解とご支援を頂ければ幸いです。



一般用医薬品の販売規制緩和問題に対する
日本薬剤師会の意見(要旨)

平成15年10月8日

医薬品のうち安全上特に問題がない
ものの選定に関する検討会  資料

1.医薬品の安全対策強化が政府の基本方針です

 医薬品の安全対策の更なる強化は政府の基本方針であり、医薬品のまま薬局・薬店以外での販売が認められることは、政府の基本方針に逆行するものと考えます。



(別添資料1:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」に対する日本薬剤師会の見解〔平成15年10月〕)


2.私たちは、過去の薬害事件などを忘れてはなりません

 我が国の医薬品に関する諸規制は、過去の薬害事件などを教訓に逐次、見直し・強化が図られ現在に至っています。医薬品に関する規制は、このような不幸な事件の再発を極力防止していくための社会的規制であるということを、忘れてはならないと考えます。



(別添資料2:我が国の主な副作用被害事件と安全対策の強化の流れ)


3.一般用医薬品といえども副作用はあります

 一般用医薬品といえども副作用の発生は必ず起こるものです。使用者に最適の医薬品を選択すること、また万一副作用などが生じた場合にその被害を最小限に止めるよう対処することが、私ども薬剤師の使命であると考えています。



(別添資料3:一般用医薬品の副作用について〔医薬品のうち安全上特に問題がないものの選定に関する検討会 (第1回)資料より〕)


4.医薬品を不適切に提供することが、適切な使用の機会を失わせます

 医薬品の副作用は、医薬品単品のみならず、他の医薬品との併用による相互作用や成分の重複等によっても生じます。また、医薬品の販売に際しては、結果として、医薬品を販売するのではなく、医師への受診を勧めることなども必要となってまいります。

 医薬品の安全性を考える上では、適切な販売方法も併せて検討されるべきであり、「医薬品を不適切に提供することが、適切な医薬品の使用や医療を受ける機会を失わせることになる」と考えます。



(別添資料4:一般用医薬品の販売における薬剤師対応の流れ(例示))


5.アメリカでも、一般用医薬品の副作用が顕在化しています

 医薬品の販売規制緩和に関し、アメリカの自由販売を例に取って議論がなされています。しかしながら、欧州諸国ではアメリカのような自由販売の形態は取られておらず、例えばフランスでは薬局以外での全ての医薬品販売は禁じられております。さらに、最近のある月刊誌の記事によりますと、「近年アメリカでも、一般用医薬品による副作用が顕在化してきたため、販売に規制を加えようとする議論が再三出てきているが、既得権を奪うのは難しく、結局は今までどおり全ての一般用医薬品が自由に販売されている」旨の報告があります。一旦規制を緩和すると元には戻せません。これら欧州諸国の販売形態やアメリカの報告事例は、我が国の規制緩和論議にも、重要な示唆を与えているのではないでしょうか。



(別添資料5:最新米国DgSサーベイ〔ドラッグマガジン2003年10月号より〕)


6.医薬品販売の規制緩和は経済活性になりません

 「医薬品の販売規制が緩和されることにより経済活性につながる」との意見があります。しかしながら、医薬品とは疾病や健康被害の際に使用されるものであります。すなわち、医薬品とは、本来、消費されないことこそ国民 ・社会にとって望ましいことであり、医薬品が経済活性につながるという意見は、医薬品の本質を見誤った意見であると考えます。また、平成11年に、15薬効群について医薬品から医薬部外品への分類変更がなされましたが、医薬品と医薬部外品の全体の売り上げは増えておりません。

 この二つの観点から、医薬品販売の規制緩和が経済の活性化につながるという議論は誤りだと指摘せざるを得ません。



(別添資料6:平成11年度の規制緩和措置による影響)


7.法治国家である以上、現行の法律・制度は遵守されるべき

 総合規制改革会議から、「薬剤師不在のまま医薬品が販売されている実態がある。したがって一般小売店での販売も可とすべき」との指摘がございます。しかしながら、現在の法律・制度で薬剤師の常駐が義務付けられている以上、それを遵守することこそ先ずは優先されるべきであり、一部に法律違反の実態があるから現行の法律・制度を無視してもよいという意見は、法治国家としてあるべき姿ではないと考えます。


8.説明・相談体制の充実や夜間対応の整備に努めています

 薬剤師による説明・相談体制の充実や、薬局・薬店における夜間対応の整備などについても指摘をいただいております。これらの指摘については本会としても真摯に受け止め、達成時期等を含めた具体的な行動計画を作成し、会員へのさらなる徹底を図っているところであります。



(別添資料7:消費者に対する今後の薬局・薬剤師の行動計画〔平成15年7月23日・日本薬剤師会〕)


9.安全性を無視した規制緩和がなされることのないよう、慎重な検討を

 以上、一般用医薬品の販売規制緩和問題について本会の考え方を述べさせていただきました。時代の流れに逆行するような、安全性を無視した規制緩和がなされることのないよう、当検討会におかれても慎重なご検討をお願い申し上げます。なお、本件につきましては、都道府県議会等多くの地方議会においても、安易な規制緩和に反対する旨の意見書が採択され、総理大臣ほか関係方面に送付されておりますことを、申し添えます。



(別添資料8:「医薬品の一般小売店における販売」に対する各都道府県議会等意見書採択状況〔平成15年10月2日現在〕)